あえて時代に流されてみるのも悪くない —— エキサイト株式会社 丸田大介
九州は宮崎で生まれ育ったという丸田は青年時代にインターネットとの衝撃的な出会いを果たす。Windows95に魅了され、パソコンを購入し、それが自分の人生を変える道具になることを直感した。その後、丸田は上京し、プログラミングの受託の仕事を始め、エキサイト株式会社に入ってからは、ゲームやエンタメの世界でクリエイターとして活躍するようになる。そんな丸田は自分のキャリアを振り返りながら「あえて時代に流されてみることも大切だ」と語った。時代に流されてみるとはなにか? 丸田の現在地にフォーカス。
黎明期からIT業界一筋でキャリアを構築
−−簡単に自己紹介をお願い出来ますか?
丸田大介といいます。今はエキサイトという会社にいまして、入って20年ぐらいになるんですかね、初期からのメンバーということで、そうですね、長くいます。今は会社でみんなが使うパソコンのお世話とかシステムのお世話というのをしているところです。
−−エキサイトには新卒で入ったんですか?
いえ、中途なんですけれども、元はシステムの開発の側の会社にいまして、受託開発みたいなビジネスの会社におりました。そこで10年ぐらいお客様に頼まれた希望のシステムを作るといういわゆるプログラマーとしてキャリアがスタートしたんですけれども、その後、転職でエキサイトに入りまして、引き続きプログラミングを主にやるメンバーとして10年ぐらいですかね。オンラインゲームとかエンタメとか、あとはいわゆるWEBインターネットの課金ビジネスのプロダクトを作っていくメンバーとして携わっていました。
--お話を伺っていると黎明期からIT業界にずっといらっしゃったという感じがします。
そうですね、もうかなり長いですね。いまは会社のバックオフィスの業務を責任者としてまとめておりますが、今でも自分でコードを書いて、なにか創りたい、と思うことはよくあります笑
衝撃的なインターネットとの出会い、革命を感じて魅了される
−−そもそものITとの出会いというか、どこが原点になるのでしょうか?
インターネットというのが、WINDOWS95ぐらいから一般的になってきたと思うんですけれども、その時が本格的なインターネットとの接触だったと思うんですよね。かなり昔の話ですね。まだ宮崎で学生をしていたころで。インターネットにつながると、もうフィールドが世界中になっていくので、コンテンツも日本語だけじゃなくて、英語のものとか、ヨーロッパのものとかたくさん入ってくるのを見た時に「これは凄いな」と思って。しかも実家は田舎だったんですけれども、田舎にいてもすぐに情報が集められるという意味では「革命が来たな」みたいな感じはありました。すぐ飛びつきましたね。何歳ぐらいになるんだろう。20歳ぐらいですかね。96年だから。覚えていることは96年ですね。
−−お話を聞いているだけでその衝撃をこちらも感じられます。パソコンを手に入れられてからはずっと魅了されて?
もうずっと触っていましたね。勉強もせずに。ビルゲイツとかスティーブ・ジョブズとかも有名でしたよね。そういう偉人に影響を受けたり。もちろんまだiPhoneとかはない、スマートフォンもないですし、インターネット回線も良くてISDN、なければアナログのガラガラガラというモデムっていうやつを使ってたんですが、普通に電話としてパソコン通信するみたいな形なので、3分10円とかのお金がかかっていたんですよ笑 時間制だったんですね。速度もめちゃめちゃ遅くて、もう画像を1枚見るのに1分ぐらいもあったり笑
−−そこから学生を卒業して、受託の会社に入社されてという感じですか?
はい、学生を卒業してから入った最初の会社が受託開発の会社で、先輩に教わりながらプログラムをするお仕事ですね。その頃は言語で言うとC言語というのが業務上は使っていまして、趣味の上ではBASICとかを使っていた記憶があるんですけれども、仕事となると違う言語というか、環境を使ってやってました。新入社員教育の凄く充実した会社だったので、そこでみっちり仕込まれるみたいな、学生時代に素人感覚で楽しくやっていた時のプログラミングとは違う感覚というのをそこで学ばせてもらったっていうのはありますね。例えば、納期だったり、作業量だったり、ミスが少なくする為にはどう書くかみたいなものを習っていくような感じでした。
Google Mapsを触って受けた衝撃と受託の限界
−−そこからどのような形で現職のエキサイトにつながるのでしょうか?
インターネットとの出会い、Windows95との出会いは衝撃でしたが、それからGoogleの検索エンジンすごいなとか、iPodすごいな、とか色々と時代の流れのなかで衝撃を受けてきたんですが、Google Mapsも凄かったなと思っていて、あの時のインターネットって普通のペラ一のウェブサイトばかりだったので、あんなインタラクティブな動きができるサービスってなかったと思うんですよ。それが急に出てきた時はびっくりしたんですけれど、ただ、僕らが受託開発で作っていた時のシステムが実はあれ、僕が当時思ったのは受託開発で作ったシステムをちょっとアレンジするとあの動きできたんですよ。流石なんですよ。今思えばさすがなんですけど、当時まだGoogleもベンチャーだし、何か僕らは受託なんで言われた通り無理やり作っていただけだったんだけども、技術としては同じものを持っていたかもしれないなって思うことがあるんですよね。
−−すごいお話ですね、ちょっと鳥肌がたちました。
売り方とか、発信の仕方が違うというだけで、多分、技術としては僕らのチームもいいものを持っていたはずだなと思う時が今でもあります。それで、受託ではなく、なにか自分でサービスをつくる側に回りたいなと思うようになって今に至るというのは、ひょっとするとあるかもしれませんね。
与えられた制約の中で創る喜びを見出す
−−エキサイトにはどういうきっかけで入社されたんでしょうか?
先ほど申し上げたように、受託ではなく、自社でサービスを開発して、直接、コンシューマーに届けるサービスをやりたいという思いが芽生え始めたときに、声をかけて頂きました。受託ではなく、お客様との近さみたいなのを感じてみたかった、そっちの方が多分刺激的だろうなというイメージがあって、まだエキサイトも初期の頃でしたが、入社することにしました。
−−どのようなお仕事をされてきたのでしょうか?
最初はパソコンでやるゲームを創ってました。パソコンも今ほどスペックがなくて、おまけにノートPCもまだまだで。ゲームゲーミングPCみたいな呼び方もない時代だったので、普通の業務用のスペックのそんなに高くないパソコンでも動くようなゲームを創っていたんですが、そんな制約の中でもさくさく動かすために苦労したりとか、ウェブのブラウザの機能も今ほどリッチじゃなかったので、そんな中でもゲームらしい動きをする為に工夫することとかがあったりして、でも逆にそれが楽しかったというのもありますね。他の人にはできないことを見つけ出して実現していく、本当にアイデアや腕が試されるみたいな。そういうところで面白さを感じていたところはあるかもしれないですね。それからゲームやエンタメの世界でプログラミングを続けてきて、バックオフィスの業務を任されるようになって、年齢的にも重ねていたので、それも一つの進み方としてはアリかなとだんだん思うようになってきたみたいなところはあるかもしれないですね。
−−バックオフィスのお仕事は未経験だったかと思いますがいかがでしたか?
エキサイトという会社の環境がそうさせてくれたのかもしれないんですけれども、あまりコーポレート部門とかと現場の事業部との垣根が感じないというか、お互いの意見もぶつけ合う時もあるんですけれども、やっぱ協力し合って進めていこうという感じはあって。だからとてもやりやすかったですね、最初から。僕が事業部側にいた時に感じていたことが、バックの裏側の方でも役立ったりすることもありましたし、スムーズに行けたような気がします。周りのメンバーもそういう経緯で今のメンバーやっているメンバーもいるので、僕だけじゃなかったというのもあるので、その点は大丈夫だったんです。
−−ずっとクリエイターとしてプログラミングされていたお立場でいうと、こういう環境を作りたいなみたいなのもあったりしたんでしょうか?
そうですね。意外とそういうのはなくて笑 まあ前より良くしようというのは常々思っていますかね。前年前の人がやっていた時よりうまくやろうとか、前年よりうまくやろうとか。今は色々テクノロジーも進んだので、もっと大らかにこちら側は構えていて、少々尖った要件が事業部から上がってきたとしても、それをうまく見守るというか、第三者目線で目配せするぐらいのスタンスでやれた方がいいなと思っています。
あえて時代に流されてみるのも悪くない
−−丸田さんから見て、いまIT業界で働きたいと思っている若い人や、実際に働いているけれども少し苦労しているというか、キャリアにもどかしさを感じられている若い人になにかメッセージありますか?
僕がちょっと業界というか、この仕事がもう長いの長いからかもしれないんですけど、とにかく変化が激しい分野だとは思うので、今各自が取り組んでいることはもちろん大事なんですけれど、それをどこかで置いていかなきゃいけない場面というのも出てくると、そういう風に思うことがよくありますね。
−−置いてくる、というのは、どういうことでしょうか?
環境の変化がとにかく激しい、さっきも言ったように、インターネットが出てきて、スマートデバイスが出てきてというような状況の変化というのは、例えば自分自身がその時代の変化を創っていく、自分が変えに行く、という手立てもあるとは思うんですけれども、みんながみんなそうはいかないので、そういう意味で、置いていく、というか、時代の激流に影響を受け続ける、そこにどう自分が身を置くか、どこに流されても良いように、身の振り方を自由にしておく、というのは大事かなと思うようになってきました。
−−たしかにそれは本当にそう思いました、みんなが時代の変化をつくれるわけじゃないから、流されても良い、自由にしておくことが大事という・・・・・・
そっちの方がより良い方向にいけることもありますね。真っすぐというよりは、色々な場所に動ける方が良さそうみたいな考えですね。若いうちはもうがむしゃらに俺はこれ一つで行くんだという考え方ももちろんあるとは思うんですけれども、長い目で見るとふらふらしてもししたとしても、それは多分なので、その時々で判断して進めたことだと思うので、1個も間違いはないんじゃないかなと思ってますね。
−−最後にあえて聞かせてください。Google Mapsを見たとき、ある意味、これは自分たちの技術でも創れた、とおっしゃいましたが、今後、日本のクリエイターから世界に誇るプロダクトは生まれると思いますか?
これ今後あるかどうか……あるあるんじゃないですかね。いずれはある、あってほしいと思いますけどね。日本ならではのというか強みはたくさんあると思うので、全然5年以内にあってもいいと思います。AIなのか何かバーチャルなのか分からないですけど、期待したいと思います。